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「私たちらしさ」を大切に、美味しいイチゴを届けたい(hiko farm 彦田真吾さん・結衣さん)



2021年、茨城県常陸大宮市で新規就農した「hiko farm」の彦田真吾(ひこた・しんご)さんと奥様・結衣(ゆい)さんご夫妻。


神奈川県出身のお二人が偶然にも、茨城県内で人生で一番美味しいイチゴに出会い、その美味しさに魅了され、イチゴ農家の道を志しました。


お二人の世界観がたっぷりとつまった「hiko farm」へ足を踏み入れると、そこはまるで別世界。

今回はそんなお二人に、イチゴとの出会い、就農したときのこと、今後の夢など、さまざまなお話を伺いました。



偶然にも出会ったのは、人生で一番美味しいイチゴ


――イチゴ農家として就農する以前は、会社員だったとお伺いしました。もともと、どんなお仕事をされていたのですか。


真吾さん:

電子機器を扱う商社で営業職として働いていました。農業とはかけ離れた仕事をしていましたが、会社の中で新規事業が立ち上がり、私もそのメンバーとして仕事をすることになりました。

主な担当は、イチゴ農家さんに対して、農業市場向けのセンシング技術を提案するというものでした。そのときに出会ったのが鉾田市の村田農園さんです。それが私と農業の最初の出会いですね。


――会社のプロジェクトの一環で村田農園さんに出会い、そこから彦田さん自身もイチゴ農家になると決めたのはなぜですか。


鉾田市の村田農園との出会いが、彦田さんご夫妻の未来を変えたことを丁寧に語ってくれた真吾さん


真吾さん:

私も妻も、これから先、会社員として仕事をするのではなく、「自分たちで何か仕事をしたい」と思っていました。妻の家族や親戚も自営業が多かったというのもあります。また、私自身、家族と長い時間を一緒に過ごしたいと思っていました。

会社員として、偶然にも農業の世界に触れて、「農業っていいな」と思うようになったんです。そして何よりも、村田農園さんでいただいたイチゴが人生で一番美味しく「なんだ、この美味しいイチゴは……」と衝撃を受けました。

そこからは、先進的技術をイチゴ農家さんに提案する仕事ではなく、私も自分で美味しいイチゴを作りたいという気持ちが強くなりました。そこからは、村田農園さんで農業のいろはを教えていただき、農業の道へ進むことに決めました。


巡り巡って、常陸大宮市で新規就農へ


hiko farmのイチゴハウス内。近くにある御前山ダムの水を使用しイチゴを育てている。


――そうだったのですね。おそらく本来であれば、常陸大宮市ではなく、鉾田市で就農するかと思うのですが、なぜ常陸大宮市を選ばれたのですか。


真吾さん:

最初は、確かに村田農園さんと同じ鉾田市で就農地を探していました。学んだ技術や感覚を活かせるのは、やはりその土地だからです。鉾田市と常陸大宮市では気候も異なるので、イチゴの栽培方法も変わります。簡単にいえば、常陸大宮市の方が寒いので、その寒さの中で、私が養ってきた感覚を再調整しなければなりません。

できれば村田農園さんの近くで就農したいと思っていましたが、なかなか条件に合う農地が見つかりませんでした。

「農地をどうしようか」と悩んでいたとき、ご縁があり、茨城県農林振興公社の方に県北地域のイチゴ農家を紹介していただきました。


――なるほど。それが常陸大宮市を含め、茨城県北地域との出会いだったのですね。


真吾さん:

そうですね。正直なところその当時は、常陸大宮市がどんな場所なのかもよく分かっていませんでした。妻と一緒に、イチゴ農家さんにお話を伺うために初めて常陸大宮市を訪れた際、とても素敵な場所だと思いました。

そこからは市役所の方に具体的に農地の相談に行き、色々と探す中で、巡り巡ってここの土地が見つかりました。ここと出会うまで、2年ほどかかりましたが、本当に素敵な巡り合わせだと思っています。


――本当にご縁ですね!2021年に就農したとお伺いしました。2年目を迎えて感じていることがあれば教えてください。


真吾さん:

周りの方々も良い人ばかりで、本当に恵まれているなと思っています。

そのほか、私と同じようにもともと会社員で家庭を持った状態で常陸大宮市へ移住し、イチゴ農家として就農した方が周りにいることもとても安心です。似た境遇だと、イチゴ栽培もそうですが、子育てや暮らしのことも相談できるので、とても有難かったです。


香りを最大限に引き出した「本当に美味しいイチゴ」を作る


――そういった環境もあると、イチゴ農家として生計を立てる上でも何かと安心ですよね。彦田さんが現在栽培しているイチゴの品種は、何でしょうか。


真吾さん:

現在栽培するのは、村田農園さんと同じ「とちおとめ」を育てています。村田農園さんでいただいた「とちおとめ」が本当に美味しかったので、今のところは「とちおとめ」一本で考えています。

これよりも美味しいと思えるイチゴにもし出会ったら、それも栽培してもいいかなとは思っています。もちろん経営のことも考えていかなければなりませんが、イチゴを栽培する上での私の一番の基準は、本当に美味しいかどうかですね。


――なるほど。彦田さんが思う「本当に美味しいイチゴ」は、どんなイチゴですか。


彦田さんが手間暇かけて育てたイチゴ。本当に美味しいイチゴは香りだと考えている彦田さんは、その香りを高めるため、日々イチゴと向き合っている。(写真提供:hiko farm)


真吾さん:

私の頭の中には、美味しいイチゴのイメージがあるのですが、いつも言葉で伝えるのはなかなか難しいと感じています。ただ、世間でよく言われる、甘みと酸味のバランスといったことよりも、私は香りだと思っています。あの香りを最大限に引き出すような、そんなイチゴを作りたいです。

品種によって、もちろん味も香りも異なるのですが、その中でもやはり「とちおとめ」が一番好きで、私なりに「とちおとめ」の香りをもっと高めていきたいと考えています。

理想とする香りに少しでも近づけるために、栽培方法をどうするか、そういったプロセスを考えることも続けていきたいですね。

美味しいイチゴを直売所でおすそ分けできるくらいの気持ちで、日々イチゴの栽培に取り組んでいるところです。


ここは、遠い国の小さな村。「hiko farmらしさ」を大切にしたい


――彦田さんご夫妻が愛情を込めて育てたイチゴを購入できる、直売所も昨年オープンしましたよね。直売所を含め、農園全体を見渡すとお二人の世界観が広がっているように思います。どんなコンセプトで運営しているのですか。



自分たちの世界観を大切にしていることをとても楽しそうに語ってくださった結衣さん。直売所内のインテリアは結衣さんが主となってプロデュースしている。


結衣さん:

私たちの「好き」を集めた世界をこの場所で表現しています。

農園全体は「遠い国の小さな村」に迷い込んだような、そんな世界をイメージしています。ハウスの近くにある大きな白いテントが直売所です。直売所は、誰もがいつか訪れたことがある、ブティックのような空間を再現しています。

私は、一点ものや掘り出し物がある、骨董市や蚤の市がとても好きで、そういったところに通っては、直売所に合うようなものがないか探しています。海外の壁紙屋さんも好きで、気に入った壁紙があれば購入しています。


2022年12月15日(木)より直売所オープン。内装や雑貨は、結衣さんの思い入れがあるものばかり。一つ一つこだわって、飾り付けをしている。(写真提供:hiko farm)


そんな私たちの世界観を表現した直売所で、赤い宝石のような、美味しいイチゴをお客様に届けたいと思っています。

また、直売所があることで、直接「美味しかったよ、また来るね」と言ってもらえたり、私たちがどんな想いでイチゴを作っているのかということも、伝えられます。

そのほか、今使用している車は、アメリカ製の旧車です。古いものが時代を超えて受け継がれていく、そういうのがとても好きで、素敵だなと思っています。


カルフォルニアのブドウ農園で長年使用されていた車が巡り巡って、茨城のイチゴ農園 hiko farmへ。


――この空間に足を運ぶと、カントリーチックで、農園を囲む銀杏の木がより一層、遠い国に来たかのような雰囲気を感じさせてくれますね。


結衣さん:

ありがとうございます。良い意味で、少し隔離されているような空間なんです。農園を囲むここの木は全て銀杏で、秋になると全て紅葉してとても可愛らしいんですよ。

敷地も広いので、近いうち綺麗なテーブルを用意して、お茶会もできたらいいなと思っています。


――ここの雰囲気にとても合っていると思います。ハウスの隣の敷地では、ヒツジやヤギも飼われていますよね。今後は、本格的に牧場経営もする予定ですか。


とても人懐っこいヒツジたち。将来的にはヒツジのチーズやクリームと彦田さんが栽培するイチゴ(とちおとめ)を掛け合わせた商品開発にも取り組んでいきたいとのこと。


真吾さん:

その予定です。

今はまだ雄のヒツジしかいないので、雌のヒツジを来年から飼い始めて、早ければ再来年子どもが生まれると思います。子どもが生まれると雌のヒツジはお乳が半年間ほど出るので、ヒツジのソフトクリームを提供できたらいいなと思っています。


また、イチゴ農家として「美味しいイチゴを作る」技術を高めつつ、イチゴとヒツジのチーズやクリームを掛け合わせて、ドルチェピザも作れたらいいなと考えています。


とても人懐っこいヤギたち。広い敷地内を元気よく自由に駆け巡る。


――彦田さんご夫妻が思い描く姿は、全てがこの場所だからこそできることのような気がしました。


「ワクワクしたこと」や「やりたいと思ったこと」をまずは挑戦してみると楽しそうに語ってくれた彦田さんご夫妻。今後の「hiko farm」について話す姿も終始笑顔が絶えない。

真吾さん:

ありがとうございます。常陸大宮市にはすでに多くのイチゴ農家さんがいて、それぞれが想いや価値観を大切にしながら、美味しいイチゴを作っています。どのイチゴ農家さんもとても素敵なので、それぞれの場所に、ふらっと立ち寄って巡ったりできる、そんな地域になったら面白いなと思っています。


その中で私たちは、私たちが美味しいと感じるイチゴを作ってお客様に提供していきたいのと、「hiko farmらしさ」を皆様に伝えていけたら幸せですね。



――今後の「hiko farm」の更なる発展、とても楽しみにしています。真吾さん・結衣さん、本日はお忙しいところ、インタビューのお時間をいただきまして、誠にありがとうございました!




取材企画・写真 常陸大宮市企画政策課 広報戦略グループ

取材・文 常陸大宮市地域おこし協力隊 谷部 文香


 

hiko farm やぎとひつじ飼いのいちご屋さん


hiko farmのロゴ(写真提供:hiko farm)

  • 住所:茨城県常陸大宮市三美259-2

  • 最新情報はInstagramをご覧ください。

  1. 農園については @hikofarm_ichigo

  2. やぎとひつじ飼いのいちご屋さんの日常については @gheepnoline


※2023年1月現在の情報です。

 

本企画は、広報常陸大宮令和5年1月号の特集「奥久慈いちごの季節がやってきた!」内、第10回『茨城いちごグランプリ』受賞農家インタビューで取材したものです。

彦田さんご夫妻は「一般の部」で金賞を受賞されています。 広報紙面はこちらからご覧いただけます。


写真提供:hiko farm

※「茨城いちごグランプリ」とは、茨城県いちご経営研究会が開催する、年に1度の審査会です。茨城県内各地のイチゴ生産者が丹精を込めて栽培したイチゴを出品し、生産技術の腕を競い合います。

 




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