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常陸大宮市で頑張る農家さんにインタビューVol.9 田口薫さん


表面はつやつやとした、田口さんが手間暇かけて育てたナス

茨城県取手市出身。常陸大宮市へ移住し、就農して、9年目を迎えた田口薫(たぐち・かおる)さん。

就農する以前は、会社員として働いていたといいます。農業未経験ながら就農した田口さんに、移住した経緯や農業を始めようと思ったきっかけ、今後の目標などさまざまなお話を伺いました。


移住とともに、農業未経験からの挑戦


――茨城県取手市出身とお伺いしました。常陸大宮市へ移住し就農されたとのことですが、以前から農業とは何かご縁などあったのでしょうか。



農業とは縁がなく、もともとは普通の会社員でした。

農業との出会いは、茨城県の「農業人フェア(※)」に参加したことです。つくば市で開催していた「農業人フェア」に常陸大宮市含む7市が参加しており、それが常陸大宮市との出会いですね。


「いつかは農業を始めたい」「就職·転職先として農業を考えたい」「何から始めれば良いかわからない」など農業に興味がある、これから農業に一歩を踏み出そうとしている方、仕事として農業を考えている方など様々な方が気軽に農業について情報を得られるイベント


――そうだったのですね。会社員でありながら「農業人フェア」に参加したということは、農業をいずれは生業にしようと考えられていたのですか。


最初は、定年退職をしたら家庭菜園をしようと思っていました。

たまたま以前の会社を退職しようと考えていたとき、ふと「もう会社員はいいかもしれない」と思ったんです。就職するというより「自分で何かをやりたい」と思いました。そのとき、定年退職後に家庭菜園をしようと思っていたことを思い出したんです。

退職しようと考えていたことや「自分で何かをやりたい」という気持ちも重なって、これは家庭菜園ではなく、本格的に農業を生業にするチャンスかもしれないと思いました。なので、就農の第一歩として「農業人フェア」に参加しました。


――「自分で何かをする」と決めることは、とても勇気のいることだと思います。「農業人フェア」に参加後、いつ頃、取手市から常陸大宮市に来られたのですか。


2011年3月に常陸大宮市へ引っ越しました。

引越しをして、まずは就農するために農業について学ぶことにしました。「どこで学ぼうか」と考えていたとき、たまたまパンフレットで見つけた、水戸産業技術専門学院の農業者を育成するコースに申込みをし、研修を受けることにしました。

研修終了後の11月からは、ご縁があった市内のナス農家さんのところでお世話になることになりました。ナスのワンシーズンについて勉強するために、1年5か月ほど研修したんです。ハウスで栽培するナスや露地ナスなど一通り学んだあとに、就農しました。



田口さんのナス畑。研修を経て新規就農。


大切なのは「自分スタイル」の農業を確立すること


――農業未経験の中での研修だったと思いますが、その中で感じた難しさはありますか。



当時は農業の素人だったので、何が正しくて何が間違ってるのか、よく分からなかったというのが本音です。目の前のことをこなすのに必死だったと思います。

農家さんでの研修や「青年就農給付金(※)」など、そういう制度も今ほど整っていませんでした。本当に手探りの状態だったんです。

研修についてはナスだけだったので、今思えば他の野菜について、研修を受けていても良かったかなとも思います。


(※)平成29年度より農業次世代人材投資事業へ名称変更。青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るため、就農前の研修期間(国内で最長2年間)及び経営が不安定な就農直後(最長5年間)の所得を確保する資金を交付する制度。


――手探りの中で、ここまで歩まれたのはとても大変だったと思います。研修はナスのみだったということですが、現在はナス以外も育てられていますか。


そうですね。今はナス以外に、ネギ、きゅうり、ミニトマトなども育てています。野菜以外だと、枝物のユーカリも育てています。枝物を始めた理由は、私の周りに枝物農家さんが多かったのもあります。 ユーカリの栽培を始めて3年ほど経ちますが、ユーカリも最初のころは、「とりあえずやってみよう」という気持ちで、ただただ目の前の作業をこなすことに必死でした。最近になってやっと形になってきたと思います。


――田口さんからはチャレンジ精神が感じられます。一つだけでなく、さまざまな農作物に取り組む難しさはありますか。


その分野のエキスパートにはなれないかもしれません。ただ、さまざまな農作物を栽培したことで、今のこの形に落ち着いてるのだと思います。落ち着くというのは、これが私の農業スタイルで、私に合っているということです。

農家は私を含めて「農業で食べていく」「農業で生きていく」という気持ちがきっと根底にあると思います。大変でも「農家になる」と決めたのは私自身です。自分で決めたことならば、しっかりと自分の農業、「自分の農業スタイル」に向き合っていくべきだと思っています。


野菜だけでなく、ユーカリ栽培にもチャレンジしている。

自分との戦い。決めたことは、最後まできちんとやり遂げる


――ここまでのお話を聞いて、田口さんは芯の強い人であるとも思いました。


「農家として○○をする」と決めたのならば、決めたことを最後までしっかりやることが大切だと思います。ある意味それは、私自身との戦いでもあると思います。組織に属して働く会社員ならば、会社に出勤して決められた時間、仕事をしますよね。ですが、農家は会社とは異なり、自分で決めてやらないと、何も進んでいきません。「いつまでに○○をする」と目標を立てて、一つずつ着実にこなしていくことが大事ですね。


――目標を決めても、その軸からぶれる人も多いような気もします。田口さんなりの目標設定の仕方や大切にしている軸はありますか。


目標が大きかったら、その目標を少し下げていけばいいと思います。あと、私がもう一つ大切だと思っているのは、人のせいにはしないということです。農作業をする中で「天候や土が悪かったからできなかった」とか、何かと理由を付ける人もいるんですが、そうではないと思います。

農家として生きていくために、この土地を選んだのも自分で、農作業が遅れたのも自分。それを認められないと、前に進んでいけないと思います。目標にしていたことが上手くいかなかったら、まずは自分でできなかったことを認めることが大事だと思います。

そしてどこがいけなかったのか考えることで、「来年はこういう風に改善しよう」といったように、次に目指す道が見えてきますし、目標も現状に合ったものに変わっていくと思います。


――ありがとうございます。最後になりますが、今後の目標などがあれば教えてください。


就農して9年目を迎えましたが、自分が思うほど上手くいっていないなと感じています。つまり、先はまだまだある、可能性にあふれているということだと思います。 毎年目標を設定して、その中で農作物の値段や育てる環境の整備、昨年を踏まえてやり方を変えてみたりと試行錯誤をしています。 自然相手の仕事なので、何が起きるか分かりません。不安もとても多いですが、その中に期待も入り混じっています。毎年「今年は去年よりもたくさん収穫するぞ」と気合いを入れます。それでも失敗することはあるんです。「だめだったな」と落ち込むこともありますが、「失敗は成功の基」というように、その失敗を次に生かせれば、それは成功に近づいているということですし、とても良い経験だと思っています。



田口薫さんへのインタビューを終えて


農業未経験から就農した田口さん。 インタビュー取材を通して、田口さんから感じたのは、就農して9年目ながらも、自分は農家としてまだまだ十分ではないと語る謙虚な方だということ。また「自分で決めたことは最後まできちんとやり遂げる」と話していたときの真剣な顔を忘れられません。物静かな話し方の中にも、芯の強さだったり「農家として生きていく」といった強い覚悟を感じることができました。


この場をお借りして、この度はお忙しいところインタビューを引き受けてくださり、誠にありがとうございました。



取材・文・写真 常陸大宮市地域おこし協力隊 谷部 文香

 

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