【漢方のハセガワ薬局】症状で悩む人を漢方の力で救いたい。地元に根付く、漢方専門薬局の挑戦
- 谷部文香
- 2022年11月1日
- 読了時間: 8分

2022年4月1日、常陸大宮市抽ヶ台町の住宅街にオープンした「漢方のハセガワ薬局」。店主で薬剤師の野口和彦(のぐち・かずひこ)さんは、「治せる人は確実に治したい」という信念のもと、丁寧なカウンセリングで、患者さん一人ひとりと向き合い続けています。また、薬剤師として市内の病院が開催する勉強会で講師を努めるなど、地域にも貢献されています。今回は、そんな野口さんに漢方との出会いやその魅力、漢方専門薬局をオープンした想いなど、さまざまなお話を伺いました。
困っている人を助けたい!漢方と出会って

――常陸大宮市がご出身だと伺いました。地元で薬局をオープンした経緯やきっかけは何ですか。
旧山方町出身です。もともと山方に実家と「ハセガワ薬局」という名前の薬局を両親が経営しており、縁があって今の抽ヶ台町へ引越しをしました。両親が経営していた「ハセガワ薬局」の名前を引き継いで「漢方のハセガワ薬局」という名前で漢方専門の薬局を、2022年4月1日にオープンしました。
――なるほど。現在は「漢方のハセガワ薬局」として漢方専門の薬局を経営されていますが、そもそも野口さんと漢方との出会いについて教えてください。
もともとは、水戸市やつくば市で、在宅医療や健康フェアに力を入れている薬局で働いていました。薬剤師は、処方箋の通りに薬を調剤して患者さんに提供する仕事。ある日、「薬を飲んでいるけどなかなか手荒れが治らなくて困っている」という方に出会いました。手を見ると、保湿が圧倒的に足りませんでした。薬局で販売している保湿剤をおすすめしたところ、手荒れが良くなり、その方にとても感謝されました。些細なことなのですが、とても嬉しかったのを覚えています。薬局で仕事をしていて、そういった方を少なからず見てきたので、何か良い方法はないかと色々と調べました。そのときに漢方と出会ったんです。
――そうだったのですね。調べたときに漢方と出会ったということですが、漢方についてはどの程度の知識をお持ちだったのですか。

さきほどもお話しましたが、両親が薬局を経営していたので、漢方について少しは知っていました。ただ「漢方は身体に良さそう」というイメージだけだったんです。
なのでまずは、漢方についての勉強会に参加し、知識の習得に努めました。そのあと実際に漢方薬を患者さんにお出ししたところ、とてもよく効いて喜んでくれました。たまたまだったのかもしれませんが、それが嬉しくてこの道に進んだといっても過言ではありません。
――患者さんに喜んでもらえるというのはとても嬉しいですよね。
そうですね。さきほどの手荒れの方もそうですが「困っている人をなんとか助けたい」、薬剤師は誰もがそういう想いを持ち働いているはずです。
薬剤師の中でも「在宅医療を頑張ろう」だったり、「地域に根付いて頑張っていこう」と思う方は「あなたに相談して良かった」と思ってもらいたいと思うんです。そして、それが何よりのやりがいだと思います。漢方は、飽き性の私が生まれて初めて本気で続けたいと思った仕事でした。
漢方の魅力は、先の見えない面白さ。毎日がドラマの繰り返し

――本気で続けたいと思う仕事に出会えるのはとても幸せなことだと思います。野口さんが思う、漢方の魅力を教えてください。
ありがとうございます。この仕事は飽きないのと、先が見えない面白さがあります。先日、私の見立てた薬が効かないことがありました。しかし、これはこの仕事をしている限り、避けて通れない道なんです。でも、その道筋が一番大切で。
漢方薬をお出しするときは、一人ひとり丁寧にカウンセリングし、その人に合ったものを提供します。私の中で一本、筋の通った方向性があるのですが、そのときはその道筋から外れてしまったんです。その日は、結構落ち込みました。逆に原因をしっかり突き止めて、私の見立てた薬が効いたときは本当に良かったと思います。毎日がこのドラマの繰り返しです。大変ですが魅力ある仕事だと思います。
――野口さんの中にある一本、筋の通った方向性から外れてしまったときは、モチベーションを保つのは大変ではないですか。
そうですね。やはり治せない人のことは、ずっと考えてしまいます。でも、モチベーションやメンタルの問題というよりも、私の引き出しが足りないだけだと思います。それなら、引き出す要素をもっと増やせばいいだけのこと。だから勉強するしかないんです。
どれだけ勉強しても、準備していても足りない。常にチャレンジしている、そんな状態に近いと思います。見立てを間違えてしまったら確かに落ち込みますが、自分の軸からぶれないようにすれば、凹むことも落ち込むこともありません。この方向性であれば、きっと間違っていないと自分自身に言い聞かせています。
漢方のプロフェッショナルとして、より確実で効果的な漢方薬を選定!

――野口さんから漢方を扱うプロの薬剤師としての姿勢を強く感じました。これなら漢方で治せるという自信は、やはり勉強したことやこれまでの経験からでしょうか。
そうですね。漢方を扱うようになって6年目を迎えましたが、最初は右も左も分からない状態でした。自信がついてきたのはつい最近のことです。漢方専門の薬局を開業したからだと思います。
もともと5年ほど他の薬局で漢方相談を行なっていました。その経験がとても生きているとも感じています。漢方薬をお出ししたらその責任は全部私にあります。当然患者さんを治したいとも思いますよね。でも最初の頃は、そう思いながらも、自分の中にもブレがあり、中途半端でした。だからこそ、ひたすら勉強しました。経験と勉強する中で得た知識を、可能な限り自分の中に落とし込みます。そうすることで、自分の漢方が量から質へと変化していったように思います。
――量から質への変化や患者さんに漢方薬をお出しすることへの自信は、野口さんの「患者さんを漢方の力で治したい」という強い気持ちがあったからこそだと思います。患者さん一人ひとりと向き合う中で感じる、漢方の可能性について教えてください。
ありがとうございます。漢方は「西洋医学の器からこぼれた人」を救う仕事だと思っています。いきなり漢方に頼るのではなく、まずは必ず病院で診察を受けてほしいです。患者さんにも「胃の痛みや頭痛、動悸がするなら、まず病院を受診して内視鏡検査やMRI、心電図をとってきてください」と伝えています。それでも異常なしという診断を受けたら「漢方に頼ってみましょうか」と話をします。つまり「西洋医学の器からこぼれた人」を救う、助ける仕事ですね。ですが漢方は一つの選択肢に過ぎません。結局は患者さんにとってベストな選択はなんなのか、それを見つけることが一番大切なんだと思います。
――漢方は、最後の砦のようにも感じられました。実際に「西洋医学の器からこぼれた人」を救ったエピソードがあれば教えてください。

以前、手が真っ赤になった状態で来られた患者さんがいました。何か所も病院に行ったのに治らなかったようで、最後の望みをかけて、来店してくださいました。「これなら漢方で対応できますよ」とたったひとこと言っただけなのに、突然私の目の前で泣き出してしまったんです。それだけ悩まれてきたんだと思います。そのとき、こういう人を丁寧に救っていくのが漢方の役割だとはっきりと自覚しました。その患者さんは幸いにも症状が順調に改善してゆき、今はもうここへ通っていません。
――漢方の持つ力を遺憾なく発揮したエピソードですね。野口さんが丁寧に向き合っているからこその結果だと思います。
ありがとうございます。「漢方って魔法ですね」と言ってくれる患者さんもいるのですが、そんなことはありません。人間が持つ本来の力というものがありますよね。正しく使えば漢方がその力に上手に働きかけて、遺憾なく効果を発揮します。そんな漢方の魅力に私自身惚れ込んでいるのだと思います。
私は、常陸大宮市の話す薬剤師!漢方専門薬局として地域に貢献

――野口さんが思う漢方の力やその魅力、漢方を扱うプロとしての想いがとても伝わりました。最後に薬剤師として地域で取り組まれていることがあれば教えてください。
市内の病院で「認知症予防カフェ」という取り組みをしています。このカフェでは、脳の活性化や脳の動きなど、認知症について学べるのですが、知り合いの認知症心理士の方にお声掛けいただき、薬剤師として脳や脳の働きについてお話をさせていただきました。
インターネットで調べることもできますが、分かりづらい説明も多いんです。直接、認知症について関心のある方にお話ができるというのは、とても有意義なことだと思います。
そのほか、オンラインで漢方に関する勉強会「漢方ライフワーク」も実施しています。漢方の寺子屋みたいなもので、私自身も勉強になりますし、一人でも多くの人に漢方を正しく知ってもらいたいと思い定期的に開催しています。
一つ一つは小さなことかもしれませんが、漢方を通して、地域に貢献できているのであれば、幸せですね。
漢方のハセガワ薬局・野口和彦さんへのインタビューを終えて

2022年9月より「取材協力者募集」という企画を立ち上げ、すぐに応募してくださった野口さん。以前から、漢方専門の薬剤師として地域でさまざまな活動をしているのを知っていたので、野口さんからお話を伺えるのをとても楽しみにしていました。取材をする中で、野口さんが漢方専門のプロとして、丁寧に患者さん一人ひとりと向き合っているということがとても伝わってきました。また「治せる人は確実に治したいんです」と話していたときの真剣な顔は忘れられません。
「身体に良い」というイメージだけが大半を占めていた漢方の奥深さや、漢方の持つ可能性も知ることができたインタビュー取材でした。この場をお借りして、お忙しいところお時間をいただき、誠にありがとうございました!
取材・文・写真(一部提供を除く) 常陸大宮市地域おこし協力隊 谷部 文香
「漢方のハセガワ薬局」店舗情報

住所:茨城県常陸大宮市抽ヶ台町894-9
電話番号:0295-55-7013
営業時間:9:00~12:30、13:30~19:00(土曜日のみ17:00まで)
定休日:日曜、祝日
最新情報は、HPやSNSから
HP:https://kampo-hasegawaya.com/ Instagram:kampo_hasegawa
※2022年11月現在の情報です。
◆取材協力者募集中
本インタビューは「あなたの地域活動を記事にしませんか?取材協力者を募集します!」に基づき、実施したものです。 取材をご希望される方は、こちらをご確認の上、お申込みください。 お申込みから1週間以内(土日祝日を除く)にご連絡いたします。
※内容によってはお引き受けできない場合もございますので、ご了承ください。
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