「皆さんのおかげで」と何度も語るのは、店主・江原真弓(えはらまゆみ)さん。 「定年したらカフェを経営する」という夢を夫・和徳さんの地元・常陸大宮市で叶えました。夫婦の夢をサポートするのは、長女・成田明香里(なりたあかり)さんと長男・弘希(ひろき)さん。
今回は、カフェ開業までの経緯やオープンしてからの出来事、今後の夢などさまざまなお話を伺いました。
結婚当初からの夢だったカフェ経営への道のり
――行方市から常陸大宮市へ移住したと伺いました。きっかけは何だったのでしょうか。
真弓さん:
常陸大宮市は夫の地元です。私は一人娘で、自分の両親が亡くなるまで、夫は嫌な顔一つせず、最後まで世話をして、一緒に暮らしてくれました。
夫への恩返しのつもりで、いつかは夫の地元である常陸大宮市へ戻ろうと決めていました。
――そうなのですね。常陸大宮市への移住と合わせて、カフェの経営も予定していたのですか。
真弓さん:
結婚当初から定年したら2人でカフェをやろうと話をしていました。2人でのんびりとやる予定でしたが娘が一緒にやりたいと言い、私たちの夢も大きくなりました。さまざまなタイミングが重なったのだと思います。
――夫婦の夢が家族の夢になったのですね。定年してからカフェをオープンするまで大変でしたか。
真弓さん:
夫の定年後に移住のタイミングを探っているうちに、家族が病気になったり、新型コロナウイルス感染症が流行したりして、なかなか機会が見つかりませんでした。
さまざまなことが落ち着いて、やっと常陸大宮市の創業支援セミナーを受けようと思った時、デザイン系の仕事をしていた娘が「一緒にやりたい」と言って、調理師免許も取得。一緒に創業支援セミナーを受講しました。
※創業支援セミナー/常陸大宮市商工会で、創業・第二創業を目指す方を対象に、セミナーを開催。創業の心構えや、経営に必要な基礎知識習得を図り、創業を成功させるためのポイントを学ぶことができる。
明香里さん:
ケーキ作りが楽しいです。常陸大宮市で創業支援セミナーを受講する前にすでに行方市の通販サイトでケーキを販売させていただいていました。
真弓さん:
昔、教員として働いていたのですが、親の介護のため早期退職。介護が落ち着いてから、行方市役所で、教育委員会や福祉事務所の相談業務の仕事をしていました。その時の同僚から娘に「行方市をPRするために、お芋を加工したお菓子を作ってくれないか」とお話をいただきました。
相談を受けたときにはすでに常陸大宮市へ移住を決めていましたが、行方市の方はそれも承知の上で頼んでくれました。「なめがたマルシェ」で、お仕事をさせていただいたことは娘にとっても、私にとってもとても勉強になりました。
「おかげさま」周りの方々に恵まれて
――行方市の方々からの理解もあったのですね。そのような中で常陸大宮市の創業支援セミナーを受講されたと思いますが、受講してみてどうでしたか。
真弓さん:
バックアップ体制がすごく良かったです。金融公庫の担当の方も企画書を何度も厳しい視点で見てくれたんです。「江原さん、誰も通らないようなところでお店を開いて、採算とれるんですか」なんて。ですが、とても参考になるご意見をたくさんいただきました。
それでもここで開業することを決めていたので、何度も企画書を提出しました。担当の方が「応援するから」と言ってくれた時は、本当に嬉しかったです。
そんな担当の方に出会えたのも創業支援セミナーのおかげです。
偶然にもそのタイミングで、市役所の商工観光課の方から「人材育成講座のいばらきアグリCoラボを受けませんか」と誘っていただきました。
※いばらきアグリCoラボ/県が主催する、農業に観光などの視点を取り入れ、中山間地域の活性化に向けた「人づくり」と「事業づくり」を支援する講座のこと
――良いタイミングでしたね!
真弓さん:
突然で驚きましたが、これも何かの縁だと思って娘と2人で受講することに決めました。そこで同じ常陸大宮市で頑張る方にも出会えましたし、指導してくださったJTBやアグリの方々もたくさんアドバイスしてくれました。
最近、その時の担当だった方がお店にも来てくださいました。
お店の建築をしてくれたのも私たち夫婦の教え子ですし、内装も私の幼馴染が勤務する家具屋さん。庭も20年以上ガーデニングを趣味にする私の幼馴染がここまで通って作ってくれました。
本当に全てが申し訳ないくらい、私たちが頑張ったというより周りの方々に助けてもらってここまで来られたんです。
――江原さんご家族の人柄だと思います。
真弓さん:
ありがとうございます。本当にさまざまな出会いが私たちを助けてくれたと思います。だからまた私たちもこのお店をきっかけに、新しい出会いが生まれたり、来てくださった方がほっとしてくれたら嬉しいと思っています。
石黒たまご園さん、木村製菓さんには良い食材を提供していただいていますし、舟納豆やそばいちの方々が来店して激励してくださったりします。嬉しいですね。
明香里さん:
皆さんが温かく迎え入れてくれたことが本当に嬉しかったです。オープンしたばかりですが、まちづくりに力を入れている方々に声をかけていただき、マルシェなどにも出店しています。ありがたいことに忙しくさせてもらっています。
新しい出会いと懐かしの再会。誰もが笑って帰るカフェに
――さまざまな方が訪れているかと思いますがお店を開いて嬉しかったことはありますか。
真弓さん:
夫は地元なので、同級生がたくさんいます。嬉しいサプライズもありました。
和徳さん:
高校卒業後、常陸大宮市を離れました。40数年ぶりに帰ってきたので、近所付き合いも代替わりしていて、分からなくなっていたんです。そんな中、何人もの同級生がお店に来てくれて再会することができました。
名前を名乗らずにお茶を飲んだ帰り際に「○○だよ。覚えてる?」と言うんです。さすがに50年ぶりの再会ともなると「あー、○○ちゃんか。すっかり変わったな。最初から言ってくれればいいのに。」なんていうこともあります。
真弓さん:
この前お店に来た女性も「江原くんがカフェを開くなんて意外だった」と笑っていたり、知らんぷりをしてご飯を食べて支払いをし帰った後、もう一度来て「○○だよ」とサプライズでお花を持ってきてくれた人もいました。
開業したことで、新しい出会いもあり、また懐かしい方と再会することもあります。
そのほか、ご年配の方々が「昔は喫茶店に行けなかったから、カウンター席に憧れがあるの。」とカウンターに座ってくれたり、クリームソーダを懐かしがって注文してくれたり、そういったことも嬉しいです。
誰もがほっとする、常陸大宮市の観光案内所になる
――とても素敵なエピソードだと思います。オープンしたばかりですが、今後の夢などあれば教えてください。
真弓さん:
何よりもまず、来てくださった方がほっとする場所になれたらと思っています。「いばらきアグリCoラボ」のセミナーを受けて、ここを常陸大宮市の観光案内所のような場所にしていきたいとも思いました。
お店に来た方が、水郡線が通る風景も素敵だとおっしゃっていました。
今はまだ市内の方、隣の大子町や常陸太田市、水戸市の方が多いのですが、いずれ遠くから来た方、観光で来た方がお店に立ち寄ってくれたときに、「ここがおすすめです」と良いところをたくさん教えられるようになれたらいいと思います。
ナリ夢工房・江原真弓さん、和徳さん、成田明香里さんへ のインタビューを終えて
真弓さんや皆さんへのインタビューで感じたことは、家族全員でお互いに助け合いながら、お店を盛り上げていきたいという気持ちが強いということ。一歩ずつ確実に進んでいらっしゃる姿は、常陸大宮市へ移住、更には、お店を構えたいと思っている方に夢と希望を与える存在だと思います。またそれと同じくらい「皆さんのおかげで」と腰の低い、皆さんの人柄が地域の方や同じ山方でお店を構えている方々からも愛される理由なのだと思いました。この場をお借りして、この度はお忙しいところ、インタビューを引き受けてくださり、ありがとうございました。
企画 常陸大宮市商工観光課 商工・企業誘致グループ
写真 常陸大宮市企画政策課 広報戦略グループ
取材協力 常陸大宮市定住推進課 定住推進グループ
取材・文 常陸大宮市地域おこし協力隊 谷部 文香
「ナリ夢工房」店舗情報
住所:茨城県常陸大宮市山方1112
電話番号:050-1284-7997
営業時間:11:30~19:00(土日祝~17:00)
定休日:月曜日(8月より火曜日も定休)
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※2022年7月現在の情報です。
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◇創業支援補助金活用者特集
広報常陸大宮令和4年7月号 P.2~3「地元で!移住で!それぞれの創業のカタチ 創業支援補助金 活用者インタビュー」
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